日常の2時間サスペンス

義父が亡くなったのは深夜から未明にかけてのことらしい。
なかなか起きてこないのを不審に思った義母が部屋を覗いて、義父が横たわっているのを発見。パニクり救急車を呼んだ結果、「不審死」として警察が乗り込んでくる羽目となった。しかも頭部に傷を負っていたことから、県警の強行犯捜査係の出動である。
まずは侵入の形跡がないか確認。続いて第一容疑者である義母に入念な事情聴取。
一方で遺体を調べた結果、口中の溢血点の状態からほぼ即死であったろうと判断。おそらくはトイレに立ったかどうかした際、心臓発作を起こしたのだろうということになった。頭部の傷は倒れたときに家具で打ったものと判明。事件性はほぼ無し。
ただし、遺体のそばにストーブがあったため、死亡時刻の推定は困難に(これは何かのトリックか!?)。
担当刑事が高校教師だった義父の生徒であったり(直接の教え子だったかどうかは聞き漏らした、というか俺は現場に立ち会っていなくて、後で妻から聞いたのだが)、検視を行った医師が、義父が校長を務めていた学校の校医だったりと地方都市ならではのドラマもおまけについた。
さらには後日、死の直前に不審な金の出し入れがあったということで刑事が再訪し、義母が再びパニクることに(まあ、これは義父の入院中に病院の費用を賄うのと、万一の場合に口座が凍結されることに備えて、娘たちがこまめに引き出したり移したりをしていたからなのだが)。

見覚え聞き覚えがあるような言葉・シチュエーションの連続に、悲しみに暮れつつもどこか高まる我々夫婦。
いや、日常の思いもかけないところに2時間サスペンスのような事態が転がっているもんだなあ。昔、深夜に何か事件があったらしいコンビニの前で、目撃者らしき人に聞き込みしている女刑事を見て以来の驚きである。

あ、そうそう。捜査員の皆さんは現場検証の間、しばしば家のトイレを借りていたそうで。「現場を荒らすな!」とはさすがにならないんですね。