日本の正しい教科書

東京新聞3月31日付「中学校教科書検定 思考力や表現力重視」より、「伝統文化」の盛り込みに苦心する各社のあの手この手。

(略)「伝統と文化の尊重」「公共の精神」などを教育の目標に掲げた改正教育基本法。教科書会社はあの手この手で、教科書に法の理念を色濃く投影させた。
「『環境の保全』はともかく、伝統文化はやっかい。やむをえず“仕掛け”をつくった」
と苦笑するのは理科の教科書編集者。仕掛けとは読み物風のコラムだ。
例えば植物の学習でイネを取り上げ、
日本は瑞穂の国とよばれていました。瑞穂とはみずみずしいイネの穂です
と日本社会と稲作の深いつながりをつづった。化学変化の学習でも古来の
たたら製鉄
を紹介した。
読み物は数学でも人気。江戸時代の和算の書物
塵劫記
や、数学の問題や解き方を額に書いて神社などに奉納した
算額
について書いた教科書もある。
「中学校で学ぶことは小学校より学術的。専門の教員が教えるので、こじつけの記述は嫌がられる。授業と切り分ける形が必要だった」
と数学教科書の編集者は説明する。
編集者の苦労話は尽きない。
理科はなるべく地名を入れ、郷土愛を誘う
光の反射の例示に池に映る金閣寺の写真を使った
登場人物を出すとき、男女で役割を固定しないよう平等性に配慮した
と悪戦苦闘だ。
ある編集者は
「採択を意識し、どの社も『うちの教科書は教育基本法を反映している』とアピールできる努力をする」
と漏らした後、つぶやいた。
「本質の部分ではないのだが…」

こじつける、こじつける。
でも、こんなんでOKな「伝統と文化」や「公共の精神」っていったい……。