さらば職人 - 笹川吉晴の徒然怪奇帖　小諸馬場裏怪猫庵

リチャード・フライシャー死去。享年89歳。もう20年近く作品を撮ってなかったので、ショックというよりは“まだ生きてたのか”という軽い驚きを覚えたのは申し訳ない。
各所の記事では『「トラ！トラ！トラ！」の』という枕詞がついていたり、「海底二万哩」や「ミクロの決死圏」による特撮冒険物の先駆的扱いだったりだが、俺としては60〜70年代の犯罪・アクションの印象が強い。暗黒街物の「ラスト・ラン」「ザ・ファミリー」とか、猟奇犯罪物の「絞殺魔」「見えない恐怖」「10番街の殺人」、ウェスタン系の「マジェスティック」「スパイクス・ギャング」、警察官物の秀作「センチュリアン」等々。
どれも骨太な娯楽作品にして、なおかつ暗〜く後味悪いところがいいのだ。
「センチュリアン」とは“自殺”繋がりでもある陰鬱な近未来SF「ソイレント・グリーン」も結構好き。
かと思うと、フィルモグラフィーの晩節である80年代になって「悪魔の棲む家PART3」「キング・オブ・デストロイヤー／コナンPART2」「レッドソニア」と、スットコドッコイな（しかしそれはそれで面白い）続篇物を連発して手がけたり、といかにも職人的佇まいがまた素晴らしい。
ああ、原作とはだいぶ違うけど「ドリトル先生不思議な旅」もよかったなあ。