地を穿つ魔

6月10日付東京新聞こちら特報部」より。

「地下原発」は菅降ろし?/超党派議連発足の狙いは


深刻な大震災や福島第1原発事故のさなかに国民をあきれさせた菅直人内閣の不信任騒動。その渦中の先月31日、超党派による「地下式原子力発電所政策推進議連」が発足した。「脱原発」の逆風が吹き付ける原発を臨海部の山の地下に造って進めようという動きだ。だが主要メンバーを見ると、「菅降ろし」を画策してきた首相経験者も名を連ねる。地下原発議連の狙いとは。(佐藤圭、篠ケ瀬祐司)


こちら特報部」が入手した地下原発議連の名簿には、民主、自民、公明、みんな、国民新、たちあがれ日本新党改革の各党と無所属の計49人が並ぶ。反原発を掲げる共産、社民両党以外の主要政党が顔をそろえた。
会長は、たちあがれ日本代表で元経済産業相平沼赳夫氏。顧問は、民主党鳩山由紀夫前首相、羽田孜元首相、石井一副代表、渡部恒三最高顧問、自民党からは谷垣禎一総裁、森喜朗元首相、安倍晋三元首相、山本有二元金融担当相、国民新党亀井静香代表―の計9人。
初会合は5月31日、衆院第1議員会館の地下1階会議室で開かれ、平沼、森、石井の各氏ら約20人が出席した。今月末にも2回目の会合を予定しているという。
原発を地下に造るという発想は、突如浮上したわけではない。自民党三木武夫政権の1975年、資源エネルギー庁で研究が始まった。
当時から反原発運動などで地上での新規立地は難航していた。地上式では建設が難しい臨海部の急峻な未利用地まで選択の幅を広げるのが狙いだった。81年には、同庁の検討委員会が「技術的、経済的も(ママ)可能」とする報告書をまとめた。
しかし、電力会社は
原発は危険だから地下に造ると思われる」
「地上立地の妨げになる」
との理由で消極的な姿勢を崩さなかった。これに不満を持った平沼氏ら自民党遊資が91年、党内に「地下原子力発電所研究議員懇談会」を結成したものの、電力会社の協力を取り付けることはできなかった。
今回の地下原発議連は、福島第1原発事故で地上での新規立地や増設はおろか、既存原発の存続も危うくなる中、かつての自民党の懇談会メンバーを中心に、与野党原発推進派が結集した格好だ。
地下原発議連は、発足のタイミングから、不信任騒動との関連が取り沙汰された、与野党原発推進派が、原子力政策の見直しに傾斜した菅直人首相を引きずり降ろそうとしたのではないか。「原発推進大連立」の拠点が地下原発議連ではないか…と。
実際、谷垣、安倍、鳩山の各氏は「菅降ろし」の急先鋒。顧問以外のメンバーを見ると、不信任賛成に動いた民主党小沢一郎元代表に近い西岡武夫参院議長、山岡賢次副代表、松木謙公衆院議員(民主党除名)らが入っている。
事務局長を務める自民党の山本拓衆院議員は、「原発銀座」と呼ばれる福井県選出だ。山本氏は「菅降ろし」を視野に入れた動きとの見方について
「特に意識はしなかったが、メンバーを見ると、不信任に賛成しそうな人ばかりだった。昔の仲間が集まれば、大連立の話もするかもしれない」
と含みを持たせる。
そもそも地下原発とはどのようなものなのか。
地下原発議連の資料によると、全地下式の場合、臨海部の山の地下空洞に、原子炉やタービン発電機など主要施設を配置し、そこに取水・放水トンネルやケーブルトンネルがつながっている。
原子炉が設置される空洞は幅33メートル、高さ82メートルと巨大なものを想定。既存の地下揚水発電所などの空洞よりも25メートルほど高いが、岩盤をコンクリートなどで補強すれば十分掘削は可能だとしている。
なぜ地下に原発を造ろうとするのか。
山本拓氏は
「地下は地震津波に強い」
と利点を挙げる。
「地表に比べて地下の揺れは小さい。福島第一原発も地下式にしていれば津波をかぶって電源を喪失することもなかったはずだ」
事故時の放射能対策でも、地下式は優れているという。議連資料では、土が30メートルかぶった原発(出力100万キロワット)で炉心を冷やす一次冷却水が失われる事故を想定。試算の結果、地表に出る放射性ヨウ素は、地上式の10万分の一になるとしている。
「(岩盤などで)放射能を封じ込めていくのが地下原発だ」
と山本氏は説明する。
建設費についても
「かつては地下の方が地上より2割ほど高いといわれたが、今は建設コストも安くなっている」。
地下に設けることで、原発を狙ったテロ対策にもなるという。
ただ、福島原発の事故が収束しない中での議論。
「今は電力会社も資源エネルギー庁も、既存の原発をどうするかで手いっぱい。原発の新規立地を進めるなら地下も必要。今すぐどうこう(建設)ではなく、選択肢の一つとして地下原発の基準をつくておく」。
山本氏は
「将来への備え」
を強調した。
地下原発は、実験炉や商業炉など閉鎖を含め欧米で6基の稼動例があるが、広がっていない。
地下原発の動きに対し、NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸経堂代表は
「放射性核廃棄物をどう処理するかという問題は、地下式でもクリアできない」
と指摘。
安全性にも疑問を投げかける。
「内部で爆発があった場合、衝撃力が内にこもる。圧力容器や格納容器が無事でも配管が壊れれば、大きな事故につながりかねない。そうなれば地上式より作業員が近寄りにくくなる」
と、かえって危険な状態になるとみる。
津波の影響は受けないのか。
「冷却が必要だから、原発は水から離れられない。地下式にしてもどこかで海とつながっており、津波の影響を受ける可能性は残る」放射能の封じ込めについても
「数十メートルの土がかぶっていたとしても、放射能は地上に抜けていくだろう」
と、効果は限定的だと予測する。
再浮上してきた地下原発
原子力に携わっている企業と『族議員』とが生き残り策を探っているようにしか見えない」
と、伴氏は手厳しい。
地下原発議連の狙いについて、政治評論家の浅川博忠氏は
「中心メンバーらは、地下原発を入り口にして、憲法選挙制度の改正、政界再編なども視野に入れているのではないか」
と分析している。

佐藤圭が反原発、篠ケ瀬祐司が政局担当ってことなのかな。

山本拓は、14日の自由報道協会の会見では政局とは一切関係ないと「笑い飛ばした」が、それを丸っと信じるほどおめでたくはなれないよな。目的か手段かはともかく。

個人的にびっくりしたのは、菅にドタキャンされたので辞めろとぶちまけました、で思いがけず器量の小さいところを見せつけたとばかり思っていた西岡参院議長までが原発ラインだったこと。一連の肩叩きも含めて妙に粘着質だなと思っていたら確信犯だったわけか。
ああなんかもう松本清張の世界です。