「女性ならではの視点」と言い出す奴は信用できない

東京新聞11月26日付夕刊より。

女性目線で名作発掘 大森の映画館 来月一新

東京・大森の映画館「キネカ大森」が、三スクリーンのうち一つ(六十九席)を過去の名作の上映専用とし、女性スタッフが運営するという珍しいスタイルで、十二月四日にリニューアルオープンする。名画座の観客は一般的に中高年が多いが、女性ならではの視点から名作を掘り起こし、新味を出すことで、客層を広げる狙いがある。(放送芸能部・小田克也)

「キネカ大森」は新作上映と並行し、二〇〇八年からは名作を特集上映してきた。成瀬巳喜男監督の傑作「浮雲」が満席になるなど試みが好評。今後は、少子高齢化で中高年の客足が伸びることが予想され、名画座を常設することにした。

経営する東京テアトルでキネカ大森の運営を統括している映像事業本部編成部の沢村敏さん(38)は、今回の女性の登用について「男性は自分の好きな映画へのこだわりが強くなってしまい、上映作品が偏る傾向にある。女性の柔軟な感覚で、いろんな映画を提供できるようになれば」と説明する。

女性スタッフは支配人、編成、営業の三人で、四十代、三十代、二十代とあえて年齢に幅を持たせた。編成担当の前田千穂さん(33)は同社国際部で八年、外国映画の買い付けをしてきた経験があり、来年一月十五日からは早速、自らが気に入っているフランスの名優カトリーヌ・ドヌーブの特集を組んだ。

劇場の内装にもこだわりを見せ、名画のパンフレットや、映画雑誌のバックナンバーを大量にそろえ、休憩時間に客に見て楽しんでもらう準備も進めている。

キネカ大森ではこうした特集上映のほか、公開時に見逃した最近の作品や、もう一度見たい傑作を併せて上映する方針で、期間は二本立てで一〜二週間。十二月四〜十日は「必死剣鳥刺し」「隠し剣 鬼の爪」を予定。料金は二本立てで一般千三百円、学生、小人、シニアは千円。上映作品など問い合わせはキネカ大森の公式サイトで。

「男性は自分の好きな映画へのこだわりが強くなってしまい、上映作品が偏る傾向にある。女性の柔軟な感覚で、いろんな映画を提供できるようになれば」
っていうけど、それって単なる個人差でしょ。
実際、登用した女性スタッフにも「四十代、三十代、二十代とあえて年齢に幅を持たせ」てるし。
「女性ならではの視点」とか言い出した時点で、思考停止だよな。


大体、この記事自体も舌足らずで、
名画座の観客は一般的に中高年が多いが、女性ならではの視点から名作を掘り起こし、新味を出すことで、客層を広げる狙いがある」
といいながら
「今後は、少子高齢化で中高年の客足が伸びることが予想され、名画座を常設することにした」
って、どっちにしたって「中高年」狙いじゃん。


そういえば、この記事を書いた小田克也という記者は、以前『タイタンの戦い』の監督インタビュー記事で、同作のオリジナルを「カルト的名作」と持ち上げていた。
そんな評価、聞いたことないぞと検索をかけてみたら、なんと映画の宣伝サイトの惹句そのままだった。
ちなみに同時期には、映画欄のレビューのほうでも松原正美というライターが、オリジナルのことを「スペクタクル映画の原点」などと言い出した。いくら何でも、たかだか30年前の作品が「原点」てことはないだろう、映画110余年の歴史はどこにすっ飛んじゃったのだ、と思ったら何のことはない、これも宣伝サイトの引用。
さすがにこりゃひどかろうと、両氏の記事について東京新聞に抗議のメールを実名で送ったが、なしのつぶてだったな。